痔瘻(じろう)は、肛門と直腸の粘膜の境界にある小さなくぼみ(肛門陰窩)から細菌が侵入し、肛門の周りで膿(うみ)がたまった後、肛門陰窩から肛門周囲の皮膚への細いトンネル(瘻管)ができる病気 です。「あな痔」とも呼ばれます。

1. 痔瘻の原因
- 原因は「肛門周囲膿瘍(のうよう)」
- 肛門と直腸の粘膜の境界にある小さなくぼみ(肛門陰窩)から細菌が侵入し感染
- 肛門の周囲に膿がたまって炎症が起こり、腫れる(肛門周囲膿瘍)
- 腫れた膿瘍が破裂したり、外科的に切開して膿を出したりすると、炎症や感染が消失し、細菌の感染経路の瘻管ができあがる→これが痔瘻
- クローン病(難病の炎症性腸疾患)に合併する
- 裂肛(切れ痔)からできることもある
2.痔瘻の症状
- 初期症状(肛門周囲膿瘍)
- 肛門の周りの腫れ・痛み(座っていられないぐらいのこともある)
- 発熱・倦怠感を伴うことも
- 痔瘻になると?
- 肛門の外に小さな孔ができ、膿が繰り返し出る
- 痛みは少なくなるが、膿で周囲の皮膚があれたり、悪臭がしたりすることも
- 一旦治癒したと思っても、しばらくするとまた膿がでてくることが多い
- 痔瘻を長年放置すると、まれに痔瘻がんができることがある
3.痔瘻の種類(Parks分類:瘻管の通る経路と肛門周囲の括約筋との関係を基にした分類)
分類名 | 特徴 |
① 皮下型(皮下瘻) | 瘻管が皮膚のすぐ下を走る |
② 筋間型(肛門括約筋間瘻) | 内外括約筋の間を走る |
③ 経括約筋型(経括約筋瘻) | 内外括約筋を貫通する |
④ 骨盤直腸窩型(超括約筋瘻) | 外括約筋を超えて骨盤内を通る |
4.痔瘻の診断と検査
- 視診/直腸指診 : 肛門周りの腫れ・膿の出口を確認します。
- 肛門鏡検査/直腸鏡検査:瘻管の入り口の状態や他の病気の有無をチェックします。
- CT/MRI検査 : 膿の溜まった部位、痔瘻の広がりを詳しく調べます。
- 大腸カメラ :クローン病などの有無を調べるために必要に応じて検査を行います。
5.痔瘻の主な治療方法
薬では治らない(自然治癒しない)ため、根治手術が必要になることが多いです。
手術の多くは肛門科の専門病院で治療となります。
- 瘻管切開術(トンネルを切開し、開放して治す) :単純な痔瘻に適応
- シートン法(ゴム紐を通し、徐々に切開する) :深い痔瘻や複雑な痔瘻に適応
- 括約筋温存切除術(括約筋を傷つけずに瘻管切除) :括約筋を貫く痔瘻に適応
6.予防方法
- 便秘・下痢を防ぐ(食物繊維・水分をとる)・肛門の清潔を保つ(トイレ後はやさしく拭く)
- 長時間の座りすぎを避ける、ゆっくり湯舟につかる(血流を良くする)
- ストレスや生活の管理(免疫力低下を防ぐ)
院長からのひとこと
痔瘻は肛門周囲膿瘍の治療後にでき、残存する場合には外科的な根治手術が必要になることが多い病気です。クローン病といった炎症性腸疾患に合併することもあります。長年放置すればがん化することもあり、注意が必要です。
当院では日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医の院長が診察をします。根治術が必要な場合には入院施設のある専門病院へ責任をもってご紹介いたします。お気軽にご相談ください。
