ヘリコバクター・ピロリ菌という胃の粘膜表面や胃の粘液の中にすみつく細菌による感染症です。菌はらせん状の形をしていて、胃の中の強い酸にも殺菌されずに存在することができます。これは、ウレアーゼという酵素を分泌し、胃に存在する尿素をアンモニアに変えて胃酸を中和してしまうからです。

1. なぜ問題なのか?
ピロリ菌がいると、胃の粘膜で慢性的な炎症がおこります。これにより、以下のような病気の原因になることが知られています。
- 慢性胃炎(活動性から萎縮性まで)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 胃MALT(マルト)リンパ腫:胃のリンパ組織にできる稀ながん
日本人の多くの胃がんに関係していていることがわかっています。国立がん研究センターなどの研究チームは、日本人5万人以上を対象として調べたところ、ピロリ感染者の胃がんのリスクは非感染者の5倍といわれ、かつ特定の遺伝子変異もあると22倍にも高くなると報告しています。
2.感染の原因は?
主に子どもの頃に家庭内で感染することが多いと考えられています。日本で昔、上下水道の整備が不十分だった時代に、井戸水などを通じても感染したとされています。したがって、現在の感染率は高齢者で高く、若年者では低くなっています(75歳で60%、45歳で25%、25歳で6%)。
3.ピロリ菌感染を調べる検査
以下のような検査がありますが、胃カメラで慢性胃炎がある場合のみ保険診療で検査が認められています(それ以外に自費になります)。ただし、名古屋市にお住まいの方は無料で抗体検査を受けられる場合があります。
- 呼気検査:吐く息を使って感染しているかを調べます。
- 抗体検査(血液/尿):菌に対する抗体を調べます。
- 抗原検査(便):菌の抗原を調べます。
- 胃カメラで粘膜の組織を取って調べることもあります
4.治療方法は?
現在感染している場合は保険診療で治療が可能です。抗菌薬と胃酸を抑える薬を1週間服用する「除菌治療」を行います。
- 除菌成功率:90%前後(一度除菌すれば再感染はまずありません)
- 不成功の場合は別の薬で二次除菌療法も可能。これでほとんどの人が除菌成功します。
- 副作用:下痢、発疹(アレルギー反応)、味覚異常など(多くは軽症)
5.除菌するメリット3選
- 胃がんのリスクを減らせる(36%低下というデータがあります)
※ゼロになるわけではありません。定期的な胃カメラ検査が必要です。 - 胃・十二指腸潰瘍の再発が予防できる
- 慢性胃炎による症状が改善する
院長からのひとこと
ピロリ菌感染は胃がんの発生と深くかかわっています。名古屋市にお住まいで、無料で検査を受けられる対象の方は、まず検査を受けましょう。そうでない方は、積極的に胃カメラを行ってピロリ菌感染の有無を調べましょう。感染がわかれば、除菌療法を早急に行いましょう。除菌ができても胃がんのリスクがなくなるわけではでないため、1年に1回は定期的に胃カメラを受けることをお勧めします。
当院では、名古屋市のピロリ検査、胃がんリスク検査、胃カメラ検査が可能です。気軽にご相談ください。
