低FODMAP食について

IBSの症状改善に科学的に効果があるとされている食事療法のひとつです。特に下痢型や混合型の方に多く用いられています。

1.FODMAPとは?

FODMAPは、消化吸収されにくい発酵性の糖質群の頭文字をとったものです:

略称成分名説明
FFermentable(発酵性)腸内細菌によって発酵されガスを発生
OOligosaccharides(オリゴ糖)フルクタン、ガラクトオリゴ糖など
DDisaccharides(二糖類)主にラクトース(乳糖)
MMonosaccharides(単糖類)フルクトース(果糖)
AAnd
PPolyols(ポリオール)ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール

これらは、小腸で吸収されにくく、大腸で急速に発酵してガスや浸透圧性下痢を引き起こすことがあります。

2.低FODMAP食の3段階アプローチ

  1. 除去期(2〜6週間)
    • 高FODMAP食品をすべて避けて、症状の改善を確認します。
  2. 再導入期(6〜10週間)
    • 1種類ずつFODMAPを段階的に再導入し、どれが症状に影響を与えるかを評価します。
  3. 維持期(長期)
    • 影響のあるFODMAP食品を、症状を起こさない範囲で再び食事に取り入れます。

3.低FODMAP食:具体的な食品例

  1. 【NG高FODMAP食品
    • オリゴ糖:玉ねぎ、にんにく、リーキ、小麦、ライ麦
    • ラクトース:牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム
    • フルクトース:リンゴ、梨、はちみつ、果糖ブドウ糖液糖
    • ポリオール:キシリトール入りガム、すもも、さくらんぼ、マッシュルーム
  1. 【OK】低FODMAP食品
    • たんぱく質源:卵、肉、魚、豆腐
    • 炭水化物:白米、玄米、じゃがいも、米粉パン
    • 乳製品代替:アーモンドミルク、ラクトースフリーミルク、乳糖ゼロヨーグルト
    • 野菜:にんじん、ズッキーニ、トマト、ナス、ピーマン
    • 果物:バナナ、みかん、キウイ、いちご、ブルーベリー

4.実践のポイント

  • 栄養バランスに注意
    NG食品を避ける際に栄養バランスを崩す恐れがあるので、注意が必要です。可能なら管理栄養士さんの指導の下で行うことをお勧めします。
  • ラベルの確認
    加工食品には意外とFODMAPが含まれていることがあるので注意が必要です(例:ソルビトール、フルクトースなど)。
  • 記録をつける
    症状と食事内容を記録する「IBS日誌」が有効です。症状に影響を及ぼす食品が分かります。

5.効果のエビデンス

  • 低FODMAP食を行うことで、IBS患者の約70%で症状の改善がみられたという研究報告があります。
  • ただし、長期間の厳格な制限は腸内細菌叢への悪影響もあるため、再導入期と維持期が非常に重要です。

日本人の食生活に合う「1週間の低FODMAP食メニュー例」

曜日朝食昼食夕食おやつ(任意)
白ごはん+卵焼き+きゅうりの浅漬け+みかん鶏肉とズッキーニの塩炒め+玄米+味噌汁(豆腐・ほうれん草)鮭の塩焼き+米粉うどん+トマトときゅうりのサラダバナナ半分+無糖ヨーグルト(乳糖除去タイプ)
トースト(米粉パン)+ラクトースフリーミルク+いちご白身魚のムニエル+じゃがいも蒸し+なすのおひたし+白米豚しゃぶ(大根おろし・ポン酢)+白米+小松菜の味噌汁キウイ+ナッツ少量
おにぎり(昆布・塩)+ゆで卵+みそ汁(豆腐・チンゲンサイ)米粉パスタ(トマトソース・ピーマン・ツナ)+サラダ鶏団子鍋(白菜・にんじん・春菊)+白米米粉クッキー(市販のFODMAP対応品)
米粉ホットケーキ(ラクトースフリー牛乳使用)+バナナ牛しゃぶサラダ(レタス・パプリカ・ゴマドレ)+玄米鰆の西京焼き+じゃがいもの味噌汁+白米+なすの焼き浸しいちご+アーモンドミルク
白米+納豆(少量)+卵+味噌汁(ほうれん草)鶏そぼろ丼+トマトときゅうりの浅漬け白身魚の照り焼き+白米+かぼちゃの煮物キウイ+米粉クラッカー
米粉パン+卵サラダ(マヨ少量)+トマトチキンと野菜のスープ煮+玄米+小松菜のごま和え肉じゃが(玉ねぎ不使用)+白米+味噌汁(わかめ・豆腐)バナナスムージー(アーモンドミルク使用)
おにぎり+みそ汁+漬物鮭のちゃんちゃん焼き風(味噌・キャベツ・にんじん)+白米グリルチキン+ピーマンとトマト炒め+米粉パスタ少量いちご+ラクトースフリーヨーグルト