過敏性腸症候群とは「腸に異常がないのに、お腹の調子がずっと悪い状態」です。検査しても特に異常が見つからないのに、お腹が痛くなったり、便秘や下痢が続いたりする病気です。

1.主な症状は?
- 腹痛(お腹が痛くなる)
- 便の異常(下痢、便秘、またはその両方)
- ガスがたまりやすい、お腹が張る
- 排便で痛みが楽になることもある
2. 原因と病態
IBSの原因や病態は一つではなく、さまざまなことが関与しています。
- 腸管運動異常:腸のぜん動が過剰または遅くなる
- 内臓知覚過敏:通常では感じない刺激を痛みとして感じる
- 腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ
- ストレスや心理的因子:脳腸相関の異常(自律神経の乱れ)
- 食事:FODMAP(発酵性糖質)の摂取
- 感染性胃腸炎:胃腸炎後に発症するケースもある
3.診断基準(Rome IV基準 2016年)
以下のすべてを満たす場合に診断されます。
- 最近3カ月間に、少なくとも週1回以上の腹痛があった
- 症状は過去6カ月以上前から始まっている
- 腹痛とともに、下記の2つ以上が当てはまる:
- 排便によって腹痛が改善する
- 排便回数が変化する
- 便性状(硬さ)が変化する
4. IBSのタイプ(便の状態で分類)
タイプ | 特徴 |
---|---|
便秘型(IBS-C) | コロコロ便、硬くて出にくい |
下痢型(IBS-D) | 水っぽい便、急な便意 |
混合型(IBS-M) | 下痢と便秘が交互にある |
分類不能型(IBS-U) | はっきり分けられない |
5.診断のための検査
- 基本は、他の病気(大腸がん、潰瘍性大腸炎など)を除外するために検査します。
- 血液検査、内視鏡検査(大腸・小腸・胃)などを行います。
- 現時点での腸内環境について、便を採取して調べる検査「腸内フローラ検査」もあります(保険診療外の検査のため自費となります)。
腸内フローラ検査についてはこちら
6.治療のポイント
- 食事の見直し
- 低FODMAP食(ガスや水分を引き込みにくい食事)
低FODMAP食についてはこちら - コーヒー、アルコール、タバコ、脂っこい食事、スナック菓子などは極力は避けるのがベター
- 低FODMAP食(ガスや水分を引き込みにくい食事)
- 生活リズムの安定
- 睡眠・排便のリズムを整える
- 適度な運動
- ストレスケア(生活環境を変える、カウンセリングなど)
- 薬物療法(必要に応じて)
- 整腸剤(腸内フローラを整える)
- 下痢止め、便秘薬(便の性状に応じて)
- 腸の動きを整える薬(消化管運動調整薬など)
- 漢方薬(体質や症状に応じて)
- 抗うつ薬(脳腸相関への対応)
「脳腸相関(のうちょうそうかん)」って知っていますか?
脳と腸はお互いに影響をおよぼす仕組みがあり、過敏性腸症候群はこれが大きく関係しています。
ストレスや不安・緊張 → 脳 → 自律神経の乱れ → 腸が過剰に反応
⇒ 結果:下痢・便秘・腹痛が出やすくなる。
この逆もあります。つまり、腸の乱れからストレスや不安を感じることもあります。したがって、この病気と向き合うためには、心と体の両方をケアすることも大切です。

院長からのひとこと
その下痢や腹痛は「体質」や「気のせい」と放置していませんか?
立派な病気です。ただし、重篤な病気の可能性もあり、きちんと診断をすることが大切です。
治療は、薬物療法(漢方薬も含む)、食事や生活の見直し、ストレス管理など行います。症状が改善するまでに時間もかかりますが、楽になる方もたくさんいます。お悩みの方は、気軽にご相談ください。
