UC
潰瘍性大腸炎
1)潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis;UC)は、炎症性腸疾患(IBD)の一つで「指定難病」です。主に大腸の粘膜で炎症が起き、ただれてびらんや潰瘍ができる病気です。直腸から連続して炎症が拡がることが特徴で、拡がりの範囲によって「直腸炎型」「左側結腸型」「全大腸型」の3つの病型に分けられます(図1)。年々、患者数は増え続け、2015~2016年の調査※では22万人の患者さんがいます。特徴的な症状は粘血便、下痢で、腹痛や発熱を伴うこともあります。
※西脇ら「潰瘍性大腸炎およびクローン病の有病者数推計に関する全国疫学調査」
図1
2)診断と重症度分類
UCの診断に欠かせない検査は大腸内視鏡検査です。内視鏡検査では炎症の程度や範囲を確認します。問診で症状の程度、血液検査で炎症反応や貧血、栄養状態を調べます。これらの結果から、重症度を「軽症」「中等症」「重症」に分け評価し、治療方針を決定します。
3)治療その1:薬物治療
UCの治療のメインは、薬で炎症を抑えていく薬物療法です。UCの経過には「活動期」と「緩解期」があり、これらが繰り返されます。活動期の炎症を抑えて緩解期へ持ち込み、できるだけ長く緩解期を維持することが治療の目標になります。
薬物療法には、①アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)、②ステロイド、③免疫調整薬、④生物学的製剤(抗体薬)などがあります。
- ① 5-ASA製剤
- UC治療の基本薬です。全身の免疫を抑えることなく、直接腸の粘膜の炎症を抑える薬です。経口剤、坐剤、注腸剤(おしりから注入する薬)があります。経口剤はすべての病型の軽症から中等症の方に使用します。坐剤や注腸剤は、直腸からその口側のS状結腸に直接薬を届けるため、直腸炎型や左側結腸型の軽症から中等症の方に使用します。
- ② ステロイド
- 現在起こっている炎症を抑える作用があり、経口剤、注射剤、注腸剤、坐剤、フォーム剤があります。5-ASA製剤の効果が不十分だった方(経口剤)、重症や劇症の方など(注射剤)、直腸炎型・左側結腸炎で軽症~中等症の方(注腸剤、坐剤、フォーム剤)に使用します。基本的に活動期の方に用いられ、緩解期となった方へ再燃予防を目的として漫然を使用すること避けます。
- ③ 免疫調整薬
- UCは過剰な免疫反応によって炎症が引き起こされる病気であるため、炎症の要因となる免疫細胞であるリンパ球の増殖を抑えて腸内の免疫異常を調整します。経口剤で緩解期の維持療法に用いられます。
- ④ 抗体薬
- 生物学的製剤とは生物がつくる抗体やタンパクを利用してつくられた薬の総称で、抗体薬はその一つです。炎症の原因となる細胞やタンパクに抗体薬が結合することによって、その働きをブロックして炎症を抑えます。TNF-α、α4β7インテグリン、IL-12/23といった物質に対する抗体薬があります。いずれもステロイドなどで効果不十分の場合に用いられ、緩解期を維持するため使用することもあります。
4)治療その2:薬物療法以外
- ① 血球成分除去療法
- 静脈から血液を抜き取り、過剰な免疫を起こしている血中の細胞だけを除去して血液を体内に戻すという治療です。中等症から重症の方、ステロイドが効きにくい方、ステロイドの減量が困難な方に対して、寛解期へ持ち込む場合に用いられます。寛解期の維持にも使用されますが、保険適応になる治療回数には上限があります。
- ② 外科治療
- 様々な内科的治療を行っても炎症の改善が得られない方、内科的治療の副作用で続けられない方、大量下血や穿孔などを伴う重症や劇症の方、潰瘍性大腸炎によって生じた大腸がんを伴う方が対象となります。基本的には大腸をすべて切除します。切除した後は、小腸を袋状にして肛門と吻合します。その際に一時的に人工肛門を作ることがあります。近年は、小さな傷で負担の軽い腹腔鏡手術で行うことが多くなりました。